当サイトではコミュニケーション能力に関する様々な知識をお伝えしています。今回のテーマは「緊張をほぐす10の方法」です!

対人場面で緊張してしまう34歳男性の相談

はじめまして。私は34歳で2児の父親です。大手スーパーで店長として働いてきました。頑張った甲斐があり、春から各店舗のスーパーバイザーとして活動することになりました。しかし、元々私は人と話すとき緊張が強く、面と向かって話すだけで脂汗が出てしまいます。店長のときは、お客様より部下と接するときの方が緊張することもありました。昔よりも慣れてはきましたが、まだ緊張は強いと思います。人と接するとき、もう少し楽になりたいのですが、どうすれば良いのでしょうか。よろしくお願いします。



専門家の視点

相談者の方は人と接するとき、全般的に緊張してしまうのですね。年齢を重ねていくにつれ、立場も上がっていくので、ゆったりとコミュニケーションしたいと思うのは自然なことです。緊張してしまうと、焦りから普段の自分のパフォーマンスを残せず、自信が持てなくなることもありますよね。今回は緊張をテーマにコラムを書きますので、参考にして頂けると嬉しいです。



緊張とは敵から身を守る本能

・緊張とは何か?
まず緊張とは、どういった状態なのかを考えていきましょう。緊張は生物学的な必要性からきていると言われています。なぜ人は緊張してしまうのか?と言うことを探ると原始時代までさかのぼることになります。原始時代の人は、外部から敵が来たときに身を守る必要がありました。そのため、敵が現れると適度に興奮状態になる必要があったのです。危機を察すると肉体を活動的にするため、交感神経を働かせる興奮物質のアドレナリンやドーパミンを放出していました。こうすることで、からだの動きを良くして外敵との戦いに備えていたのです。



・適度な緊張はOK!
現代でも適度な緊張は仕事や試験、スポーツでメリットがあります。例えば、試験のとき完全に油断していたらいい結果が残せるでしょうか?集中力がなければ普段の実力は出せないでしょう。仕事やスポーツでも適度に緊張することで、普段の自分の力が出せるのです。



・緊張は「死んだフリ」のナゴリ?!
話を原始時代に戻しましょう。緊張は敵と戦うために大事なものでしたが、あまりに敵が巨大すぎるときは戦っても意味がありません。そのため、もはやお手上げ状態のときは「死んだフリ」が一番生存に有利だったのです。緊張があまりにも強いと頭が真っ白になることがあります。これは原始時代の「死んだフリ」の名残だといわれています。



・「死んだフリ」は現代に通用しない
しかし、緊張が行き過ぎた状態の「死んだフリ」は、現代では自分を助けるどころか、自分自身を危うくする結果を招くことさえあります。例えば、会社の大事なプレゼンの場面で、緊張によって頭が真っ白になると、本来伝えるべきことが伝えられず、会社に大きな損失をもたらすことがあります。スポーツの世界でも、大きな大会で緊張が強すぎると実力が発揮できず不本意な結果になることもあります。また、試験でも緊張によって頭が真っ白になると、本来合格すべき水準の大学や資格試験に落ちてしまうことすらあります。



・緊張のコントロールを目指す!
緊張は自分を助けることもあれば、自分自身を脅かすこともあるため、適度にコントロールする必要があるといえるでしょう。緊張に関しては、心理学の分野で様々な研究がなされてきました。そこで、当コラムでは緊張を取り巻く様々な改善方法を解説していきます。



こんな人におすすめ!
・緊張して人と接することが苦手
・人前に立つことが極度に怖い
・人と話すと緊張で脂汗が出てくる
・頭が真っ白になることがある


・・・という方は、ぜひ活かしてください。





①緊張のメカニズムはこれだ!

・どんなときに緊張は強くなるの?

リスクの強さ×失敗する確率=緊張の強さ

として考えるといいでしょう。例えば、コンビニで大量のお菓子を買ったとき「袋にいれますか?」と店員に聞かれたら、皆さんはどのように答えますか。ほとんどの方が「はい、お願いします」と言うでしょう。

この例は、リスクはとても小さく、失敗して袋が手に入らなかったとしても言い直せばいいだけです。また「はい、お願いします」という答えは複雑でないため、失敗する確率もほとんどありません。そのため、この例ではほとんどの方が緊張しません。



・こんな状況だと緊張も強くなる!
しかし、仮に以下のような例になったらいかがでしょうか?

あなたはかなり大きなプロジェクトの営業担当になってしまいました。失敗すれば会社に10億円の損失があり、会社での評判はガタ落ちになってしまいます。明日得意先へのプレゼンがありますが、プレゼンに慣れていないにも関わらず練習する時間も取れませんでした。

さて、先ほどのコンビニの例に比べてどうでしょう。失敗すれば会社での評価はガタ落ちになってしまうので、リスクがとても大きくなってしまいます。また、プレゼンにもなれていないので失敗する確率も高くなります。そのため、緊張は大変強くなってしまいます。



・「リスク」と「失敗する確率」をコントロールしよう!
このように緊張は、リスクの大きさと失敗する確率が大きいほど強くなってしまうのです。
そこで緊張を軽減するには、リスクの大きさの管理と、失敗する確率を下げることが大切になります。



②まずはリスクを軽くよう!

・チャンスを増やすと、リスクも軽くなる!
先ほど緊張は失敗するリスクが大きければ大きいほど強くなるとご紹介しました。ではリスクを小さくするには、どうすれば良いのでしょうか。対人コミュニケーションにおいては、1つの人間関係に依存しない状態を作ることが大切になります。



・1度きりのチャンスは危険信号!
分かりやすく恋愛に例えてみましょう。年に1回しか合コンがなく他に出会いがない方と、年に100回合コンがある方はどちらが緊張しやすいでしょうか。100回合コンがある方は、たとえ今回の合コンが失敗したとしても、次があるのでそこまで緊張は大きくならないでしょう。しかし、年に1回しか合コンがない方は今回の合コンに失敗したら、もう1年間も出会いがないわけです。この1回にかけなくてはならないため、リスクがとても大きくなり緊張しやすくなってしまいます。



・日頃のコミュニケーションでリスク回避!
次は、仕事で例えてみましょう。会社の社内プレゼンでプロジェクトを評価してもらう立場になったとします。このプロジェクトのプレゼンには社長や多数の上司が見にきます。しっかりとしたプレゼントを行う意味ではリスクがとても大きくなります。しかし、仮に普段社長や上司と積極的にコミュニケーションをしていたらどうでしょうか。社長や上司に自分の考えを伝えることができていれば、たとえプレゼンで失敗しても普段のコミュニケーションで取り返すことができます。一発勝負で評価が決まるときよりリスクは小さいとなるため、緊張のしやすさも変わってくるのです。



・緊張しにくい環境を作る!
このように緊張しにくい環境を作ることはとても大切です。特に緊張しやすい方は、人生が一発勝負で決まってしまうような環境に自分を追い込まないスキルももつことも大切になってくるのです。



③失敗する確率を下げよう

・入念な準備で緊張しない(失敗しにくい)環境を
もう一度緊張について復習をしましょう。緊張は、以下の公式で表すことができます。

リスクの強さ×失敗する確率=緊張の強さ

この公式から、失敗する確率を下げれば緊張を減らすことに役立つのがわかります。では失敗する確率を下げるにはどうすればいいのでしょうか?まずは、準備をしっかりとすることです。入念な準備は、失敗する確率を下げてくれるため緊張は軽くなります。準備段階の反復練習で100%成功する位の精度になるよう、練習を何度も繰り返してしっかりと準備をしましょう。



・本番をイメージして練習しよう
練習は、できる限り本番に近い状態で行う事が大切です。私は講師業をはじめた頃、あがり症に悩まされていたため、自主練をしました。できる限り本番に近い環境を作るために、雑誌やインターネットにUPされている人物写真を部屋に並べて講義の練習をしました。30枚ぐらい並べて練習していたのですが、相当不気味な光景でしたが(笑)いい練習になったと感じています。

特に本番が重要な場所であるほど練習量が物を言います。練習で限りなく100%に近い形で成功するようになれば、本番で緊張しても6割ぐらいのパフォーマンスは残せるようになってきます。「多少は失敗してもなんとかなる!」という状態まではしっかり練習しましょう。



④緊張しにくい状態を作る

・自尊心が低いと緊張しやすくなる
緊張に近い概念の「あがり」と「自尊心」にどのような関連があるかを研究した結果に、自尊心が低い人ほど緊張しやすくなることがわかっています。例えば、人と接するときにあがらない人は「自尊心が78%」あったのに対し、非常にあがる人は「自尊心が52%」しかなかったのです。あがりにくい人に対してあがる人は30%以上も自尊心が低いことがわかります。そのため、緊張しにくい状態を作るには、自分に自信を持つことが大切になります。



・小さな成功体験で自信をつけよう!
ただ自信をつけると言っても、なかなか簡単にはいかないでしょう。自信をつけろ!といって自信がつくなら誰だって自信満々になってしまいますよね。自信をつけるコツの一つに、“自分の身の丈にあったチャレンジを繰り返し小さな成功を積み重ねていく“というものがあります。

自信が無いからといってチャレンジしなければ、自信を付ける事にはつながりません。また、自分の身の丈以上のチャレンジをしても失敗の確率が高く、更に自信をなくしてしまうことにもつながり兼ねません。簡単すぎず、難しすぎない課題を自分の中で作って、少しずつ自分の領域を広げていくことが自信をつけるコツになります。チャレンジするときは成功確率が70%ぐらいのことにチャレンジしていくと良いでしょう。

私自身、仕事の難易度によっては断ることもあります。自分の能力は自分がわかっているので難しいとかんじる場合は前向きにあきらめることもありします。緊張を軽くするには自信が必要です。身の丈にあった適度なチャレンジから成功体験を積み重ねて、自信をつけましょう。



・あがることにこだわると逆に緊張しやすくなる
あがりの研究では“あがることにこだわる”だけで、あがりやすくなることもわかりました。例えば、あがっても困らないと答えた人は「“かなりあがる”が13%」に対して、あがりをなんとかしたいと答えた人は「“かなりあがる“が55%」という結果になりました。

これはとても矛盾した結果だと思いませんか。「あがりを治したい」と考えれば考えるほどあがりが強くなる可能性を表しています。心理療法の中には森田療法と言う分野があります。そこでは精神交互作用と言う言葉を使って、人間の心理を考えることがあります。精神交互作用とは、ある精神症状を改善したいと考えれば考えるほど逆にその症状を強くしてしまうという心理的な作用を意味します。

すなわち人間の心とは矛盾したもので、「あがりを治したい」「緊張をもっと改善したい」と考えれば考えるほど緊張を強くしてしまうのです。緊張そのものにこだわることは、もっと緊張を強めてしまう危険性を秘めていることに留意しなければなりません。

前回のコラムで準備をしっかりし、リスクを分散させることが大切であるとお伝えしました。これはある意味「多少は緊張してもOK!」と言う状態を作り出す作業でもあります。緊張=アウト!と言う状態を作ると余計に緊張にこだわってしまいます。緊張=特に問題なし!と言う状態を作ると、精神的に余裕を持てるようになります。

緊張やあがりは人間の自然な感情のため、直接どうにかして効果を得る事は難しいでしょう。それよりもやるべきことをやって、本番では多少緊張してもok!緊張しながらやるべきことをやる!と言う心が大切になってくると考えましょう。



⑤緊張を軽くする訓練(系統的脱感作法)

・緊張を軽くする訓練をやってみよう
前回のコラムでもお伝えしたとおり、緊張は以下の公式で表すことができます。

リスクの強さ×失敗する確率=緊張の強さ

リスク管理をしっかりとして、失敗する確率を下げる、緊張にこだわらないようにするとそれだけで緊張が軽くなり、精神的に余裕を持てるようになります。これらが、緊張を軽くする基本の考え方となりますが、その他に「イメージを使った緊張の軽減方法」「体から緊張をほぐす方法」「つぼを押すことによる緊張の軽減方法」などがあります。今回はこれらのやり方についてお伝えしますので、これまでお伝えした内容とあわせてご自身に合いそうな方法を活用してみてください。

まずは、心理療法で過度の緊張や恐怖心を改善する有名な方法をご紹介します。ウオルピが開発した系統的脱感作法です。今回はやり方を簡単に説明します。本格的なものではないのでまずはお試しぐらいのつもりで実践してみましょう。



・系統的脱感作法でリラックスをイメージする
系統的脱感作法は、“緊張や恐怖を感じる場面でリラックスするイメージをして緊張や恐怖を柔らかくする”という理論です。具体的には以下の4つのステップで練習してみてください。

STEP1
まずは不安階層表を作成します。不安階層表とは自分自身にとって不安だと感じる場面を得点にして書きだす作業です。最大を100点として以下のように、5段階ぐらいで作ると良いでしょう。

① 同姓の友人、金澤君と喫茶店で話す
不安得点 10点

② 異性の友人、澤本さんと歩きながら話す 
不安得点 30点

③ 異性の友人、澤本さんと喫茶店で話す
不安得点 50点

④ 会社の飲み会で、自分の話をする
不安得点 70点

⑤ 知らないサークルに参加して、自分の話をする
不安得点 100点

STEP2
次に、自律訓練を行います。以下の言葉を1つ1つ丁寧に自分に言い聞かせてください。1つにつき3分程度行います。時間がない場合は②まででもOKです。

① 手足が重たい
② 手足が温かい
③ 心臓が静かに脈をうっている
④ 楽に深呼吸している
⑤ おなかが温かい
⑥ 額が心地よく涼しい


STEP3
リラックスができたら、不安階層表の①をイメージします。例の場合「金澤君と喫茶店で話す場面」をイメージします。このとき不安を感じていたら、今度は金澤君と話しているイメージを持ちながら、STEP2の暗示をかけていきます。不安は段々と治まりリラックスできるようになります。人間は不安とリラックスを同時に味わうことが難しい生き物のため、不安の軽減は段々と感じる事ができるでしょう。不安階層表の①がクリアできたら、もう少し恐怖が大きい項目にチャレンジしていきます。ただいきなり全てをやるのではなく、その日の体調や心の状態に配慮しながらできるところまで進めると良いでしょう。

STEP4
最後に消去動作を行います。系統的脱感作法を行うと軽い催眠状態になっています。

・手の平を強く握ってパッとはなす
・肩をぐるぐるまわす
・体をほぐす
以上を行って終了してください。

あとは現実の場面で負担の小さいものから試してみます。イメージでリラックスできていても、全ての不安を無くす事は難しいと思いますが、今までよりも気持ちが軽くなることが多いです。ぜひ試してみてくださいね♪



・体の面からリラックスする運動方法
ここまで心理的な緊張のほぐし方、イメージを使った緊張のほぐし方について学習してきました。最後に、体を使った緊張の緩和法を学習していきましょう。

緊張状態は、人間の活動を活性化させる交感神経が優位になっていることが多く、興奮状態にあります。そこで、緊張を緩和する副交感神経を動かし、体の面からリラックスするようにしましょう。「深呼吸をする」「姿勢を正して体を動かす」などが効果的です。特に体がこわばって、肩がガチガチになっている場合はぜひ試してみてください。

以上で緊張についてのコラムは終わりです。まとめると、以下のようになります。

・適度な緊張はOK
・過剰な緊張は体にも心にも悪影響
・リスクの強さ×失敗する確率=緊張の強さ
・リスク管理をしっかりとしよう
・失敗する確率を下げるにはとにかく準備をしっかり
・系統的脱感作法でリラックスするイメージを持とう
・体が硬くなっている場合はリラックスする体操を試してみよう


ここまでコラムを読んでいただきありがとうございました♪もっとたくさんのコラムを読みたい方は、「コミュニケーション能力知恵袋(http://www.direct-commu.com/chie/)を参考にして頂けると幸いです!